Annunciation








 夢を見たのだが聞いてくれるだろうか。お前の夢だ。言いたい事や聞きたい事があっても黙って最後まで聞いて欲しい。


 夢の中でお前はいない。私は一人でお前を待っている。いつ帰ってくるとも判らないお前を待つのは辛く、毎日が地獄のようだったが、ある日、唐突にお前は帰ってきた。

 ひどく破壊された姿で、聞けば追われているのだと言う。驚いている私に、お前は何かを押し付けた。「絶対に見つかるな」そう言いお前は再びいずこかへ消えた。

 私の手には、お前が手渡したものが残った。

 それは鮮やかな黄色の鉱石で、私は一目で気に入った。お前の言った事を思い出し、私はそれを急いで隠した。誰にも見つからぬように、私のスパークチャンバーへ。

 しばらくすると追っ手が私の元へやってきた。

 メガトロンは大変なものを奪ったのだと言う。

 私は、それを知らないかと詰問されたが、しらを切った。すると相手は、おまえがメガトロンの奪ったものを受け取ったのは判っている、そしてそれはおまえに与えられる物ではないので返せと言ったので、私は、絶対に返さない。無理やり奪おうとするのなら争いも辞さないと抵抗した。

 お前がそれを私のために奪って来たのだとなぜか知っていたからだ。

 お前があまたの危険を侵し、体のあちこちが動かなくなるまで傷ついて、多大な犠牲を払ってそれを私のために取って来たのだと知っていた。

 これは私がメガトロンから貰った大切なものだからと頑として譲らずにいると、ついに追っ手は諦めた。

 黄色い鉱石は、言い争っているうちに私と一つになってしまったのだと言う。

「本来ならばそれはおまえたちには与えられぬはずのものだったが、おまえたちはついにそれを自分たちのものにしてしまった。こうなっては仕方がない、それはおまえたちにやろう」

 そう言い残して追っ手は姿を消した。

 私が慌ててスパークチャンバーを見ると、黄色い鉱石は無くなっていた。無くしてしまったのかと思い、私はがっかりしたと同時に酷く落ち込んだ。


 お前に申し訳ないと自分を責めていると、急にラチェットが現れた。驚いている私にラチェットは厳かな表情で近づいてきて一礼すると「おめでとうございます」と私に告げた。


 夢の話はここまでだ。


 ラチェットに体を診て貰った。ラチェットは夢の中と同じように厳かな顔をして、私に「おめでとうございます」と告げた。

 ラチェットが言うには、時が経てば私は二つ身になるのだそうだ。

 それまでに、新しいスパークを納めるボディを用意しなければならない。

 私は黄色が良いと思う。夢で見たあの鉱石と同じ、見たもの全てが楽しくなるような、明るい黄色にしたい。

 皆を幸せにする陽気な色だ。


 これより質疑応答を始める。質問のあるものは挙手を。ではメガトロン。







20090524(初出 Bumblebee's Diary+)
20130127 再録改定版 UP

ばんぶるびー誕生前のおかあさん。


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