Lady commander
誰も私と判るまい。そう思うと、楽しくなった。
ラチェットから貰った新しいボディは、元の自分の体とは全く違う。見た目も大きさも機能も、種族さえも。
新しい武器を下ろした時よりもわくわくする。
それに加え、別人になったような開放感が気持良い。
同じ目線に「人間」がいるのは新鮮だ。
「やあ」
にこやかに笑ってすれ違う相手に手を上げると、相手はオプティマスを呆けたように見ながらゆっくりと手を上げる。上げた手を下ろすのも忘れ、通り過ぎてゆくオプティマスをいつまでも目線で追う。
おかしくなったのはその男だけではない。作業途中のままポカーンとした顔のエンジニアが工具を取り落とし、見とれたオペレーターはインカムの向こうから必死に呼びかけられる声に気がつかない。
目当の機体を見つけ、オプティマスは駆け寄った。おおっというどよめきが起こる。
「メガトロン!」
「誰だ貴様は?」
「私だ!」
足元でメガトロンを見上げる青髪の女を見下ろしていたメガトロンは、しゃがんで顔を近づけた。
しばらく観察して、呆れたような口調で言う。
「お前が相当のもの好きだとは知っていたが、今回ばかりは呆れたぞ、プライム……。脆弱な『人間』の体を自分のボディに使うなど!」
「よく判ったな。完璧に『人間』になったつもりだったのに」
「どんな姿になろうが、俺がお前を判らん訳が無いだろう。偽装は俺たちの専売特許だが、人間の女はやりすぎだ。だいたいなぜ『女』なのだ? 『男』の方が出力が大きかろう」
言いながらメガトロンのセンサーがオプティマスの新しい体を計測していく。
誰がデザインしたのか、まるでアニメの登場人物のような青い髪に、元の瞳を思わせる大きな青い目、赤い唇、大輪のカサブランカを百輪あわせたようなゴージャスで艶やかな美貌。白くてきめ細かな肌が全身を覆い、男を見下ろす高身長、すらりと伸びた長い手足、腰は蜂のようにくびれている。胸元には、フーバーダムで働く男どもの視線を全て奪った、白くて大きくて張りの有る柔らかそうなまるいふくらみが二つ。
「偽装」はしているものの、人目を忍ぶどころか人目を引くことこの上ない。
「男性型のボディもあるにはあるのだが、絶対にこっちが良いと熱心に勧められたのだ」
少し身動きをするたび、ゆさっと大きくて形の良い胸が揺れた。熱心に勧められた理由は聞かなくても判る。開発部署には人間の男が多かったのだろう。
「それに、お前に愛してると言うには、地球ではこの体の方が相応しいと言われたから……」
オプティマスが照れたような笑みを浮かべて嬉しそうに言うと、メガトロンが突然手を振り下ろした。
鼻先をメガトロンの手がかすめ、コンクリートの床と金属がぶつかる恐ろしい音が消えると、メガトロンの手がオプティマスと自分たちを遮る壁となっていることに気付く。
オプティマスの周りに甘いお菓子にたかるアリのように集まってきた男どもはショック死寸前の恐怖を味わい、次にメガトロンの目を見て更に恐怖した。この行為が寛大な警告であり、次に訪れるのは間違いなく死である事を悟る。
メガトロンの手の内側にいるオプティマスは、大きな音に怖がりも驚きもせず、不思議そうに首をかしげる。
「何だ急に?」
「たとえニセモノだろうと、貴様の体が欲望にまみれた下卑た目で見られるのは我慢ができん」
「そうなのか?」
きょとんとした顔でオプティマスが言い、メガトロンの指の隙間から外を覗くと、名残惜しそうに何度も振り返りながら逃げていく大勢の男たちの後姿が見えた。「ありがとう」とはどういう意味だと思っていると、メガトロンに声をかけられる。
「貴様、布の装甲はどうした。あの、服とかいう」
「あっ、忘れた」
素っ頓狂な声でオプティマスは言うと、くしゅんと小さくくしゃみをする。
「道理で寒い訳だ。人間は衣服で体温を調節するからな」
メガトロンは一つ大きく排気すると、一糸纏わぬ裸のオプティマスをそっと掴み上げた。
「柔らかいな」
思わず呟く。
「うん。だから優しくしてくれ」
「スパークチェンバーの側にいろ。暖めてやる」
メガトロンは自分の胸元にあるくぼみにオプティマスを降ろすと、オプティマスはメガトロンにぴったりとくっつく。
「あったかいな」
「柔らかい……」
嬉しそうなオプティマスを他所に、メガトロンがまた呟いた。
胸元の大きな二つのふくらみ。あれが特に柔らかい。抱きつかれると、むに。と妙な感覚がする。それに足の付け根のふくよかなクッションもだ。硬いのには慣れているが、柔らかいものに耐性が無いメガトロンが戸惑う。
「ちょっと、離れろ」
「どうしてだ? くっついてると暖かいのに」
「いや……。柔らかくて妙な気分になる」
「なんでだ?」
「くっつくな!」
「いやだ寒い!」
オプティマスは反抗し、ぎゅーっと強く抱きつく。
「おっ、おい!」
珍しくメガトロンがうろたえていると、通路の向こうからサムとミカエラがオプティマスの名前を呼びながら慌てた様子で走ってくる。
「君たちもここに来るか? 暖かいぞ」
メガトロンの胸元から身を乗り出して、メガトロンの足元で自分を見上げる二人に言うと、メガトロンに摘み上げられた。
「お前が下へ行くんだ!」
「嫌だ!」
オプティマスはメガトロンのボディの隙間の奥へ入りこもうとして抵抗するが、捕まえられて地上に降ろされる。
腰に手をあてた仁王立ちで、不機嫌そうな顔をしてメガトロンを見上げるオプティマスの体に、ミカエラが持ってきたシーツを急いで巻きつける。
「オプティマス、だめよ裸で歩き回っちゃ!」
ミカエラが叱ると、オプティマスは深く頷いた。
「風邪を引くからな」
「いやそうじゃなくて……。嬉しすぎるから。じゃなくて、えーと」
サムが説明に四苦八苦していると、ミカエラが声を張り上げる。
「女の裸は好きな人にだけ見せるの! 好きでもない男にタダで見せたりなんかしちゃダメ」
「了解し、記憶した。これからはメガトロンにだけ見せる」
ミカエラの言葉を、オプティマスは一発で理解した様子で頷き、サムはそれ以上追求されなかった事にほっとしたが、メガトロンは裸を見せられて嬉しいのだろうかとちょっとだけ疑問に思った。
ENDE.
この後も擬女オプティマスはお絞りで首の後ろを拭いたり傘でゴルフの素振りしたりガード下の飲み屋にいったり「っあ〜」って感じに首を回したりしてミカエラに「可愛いんだからおやじくさいことはしちゃダメ!」って教育的指導を受けます。
でも車庫入れ姿がカッコよく一発で停めたり高い場所の蛍光灯を換えてくれるので女の子やサム母にもてる。
ついでの妄想ですがエロだと触手。
メガ様も擬人化するなら擬女メガ様×擬女OP×擬女メガ様で。
20081219 UP