フレンジーくん 第一話







「オッ、スコルポノック、チョコレートじゃねえか!」

「きゅうっ、きゅうっ、きゅうっ!」

「そーかそーか、ブラックアウトにか、見せ付けやがって、コノコノー!!」

「きゅううっ!」

「でもよー、せっかく、バレンタインデーにチョコあげるんだったら、なにもそんな色気のネー板チョコ買うことないだろ?」

「きゅう……、きゅうっ!!」

「ブラックアウトはこれが好きだからって? 同じ奴でも、形がハートとか包装が綺麗な奴とかあるだろー」

「きゅう……」

「わり、余計な事言っちまったな。落ち込むなって! ブラックアウトはお前からチョコもらえるだけで大感激だろうからよー、どーせ包装紙なんかバリバリ剥がして、一口でパクっ! なんだからキニスンナ!」

「きゅっ、きゅっ!」

「はぁ? 買いなおすって? お前小遣い少ないのにけなげだなー。そーだ、手作りチョコにしろ、手作り」

「きゅっ!」

「おう、がんばれよー」

「フレンジー、貴様、スコルポノックの言うことが判るのか?」

「いいや、わかんねーけど、それがどうかしたか、バリケード?」



20080214 初出 日記












フレンジー君 第二話







「その有様は何だ?」

「きゅう……」

「バレンタインデー? なんだそれは。お前が頭からチョコレートを被ってるのと何か関係があるのか?」

「きゅっ、きゅっ」

「湯煎にかけたチョコをまちがってぶちまけた。まあそれはおまえの勝手だが、それを俺に食えとは何事だ」

「きゅっ!」

「なぜお前が俺にチョコレートを献上せねばならんのだ?」

「きゅ……。きゅきゅきゅっ!」

「なっ! 恥ずかしげもなく何を言っている馬鹿者! はしたない奴だ。鳴かぬ蛍が身を焦がすと言ってだな……」

「きゅきゅきゅっ! きゅきゅきゅっ! きゅきゅきゅっ! きゅきゅきゅっ!」

「判った判った、おまえの気持ちはよくわかった!」

「きゅう〜〜」

「そこまで言うのなら食ってやらんでもない」

「きゅきゅ!!」

「逃げるな。くすぐったくても我慢しろ。食えといったのはお前だろう」

「きゅうきゅ」

「……別にお前が俺をなめる必要はなかろう」

「きゅ……」

「なぜ残念がる」

「きゅ〜」

「だからなぜ俺を舐める」


「スコルポノックはドローンなのに、何だこの敗北感はー!! なんでだー! バリケード教えてくれ、なんでなんだー!」

「奇遇だなフレンジー。丁度俺も同じ思いをしていたところだ」



20080227 初出 日記









フレンジー君 第三話







「バレンタインデーだし、することないからリッツパーティしようぜ! ブラックアウト抜きで。あれ? メガトロン様は?」

「花束とラブレターとプレゼントとチョコレート的なものもってフーバーダム方面に飛んでったぞ」

「メガトロン様の攻めの姿勢を俺たちも見習うべきなんじゃないか?」

「アホか。ああいうことはメガトロン様がやるから喜ぶのであって、俺たちみたいなのがやったら、ボーンクラッシャーの刑だぞ」

「メガトロン様がやったら『抱いてくれ』で、俺たちがやったら『首切り』。俺たちはバレンタインデーにリッツパーティー、メガトロン様は今頃オプティマスと……。格差社会ってこういうのを言うんだな」

「いいなあ」

「メガトロン様はこんなにもやり手なのに、それに引き換えおまえらときたら」

「デバステーターは別に羨ましくない」

「この期に及んで嘘つくのやめようぜ……」

「嘘じゃない。デバステーター、オプティマスとデートしたとしてもなにしていいかわからない。どうやってキスとかにもって行けばいいのか判らない。だからいい」

「確かに」

「オプティマスに首落とされた事のある俺から言わせてもらうと、身の丈にあわないことやって神経すり減らすより、おまえらとリッツパーティするほうが楽しいよ。俺、お前らのこと大好きだから」

「泣けてくるな」

「オイ、そこで諦めたら終わりだろ!! だから俺たちはもてないんだ」

「俺は羨ましい」

「ブラックアウト、いつのまに!! それにお前にはスコルポノックがいるだろ!!」

「勘違いするな。俺はオプティマスが羨ましいんだ.」

「な、なんだってー???!!」

「ブラックアウト、おまえ、ホンモノだな……!」

「いや、俺も羨ましい!!」

「バリケード、お前もそんなにメガトロン様の事を!」

「フレンジー、貴様もだろう?」

「ああ、実は俺も羨ましいぜ、心からな。ぶっちゃけ俺もメガトロン様とメルティしたい!!」

「デバステーターも羨ましい!」

「うぉぉぉ、ディセプティコンズの心が今ひとつになった!! 俺たちはメガトロン様が大好きなんだ、その熱い想いは誰にも負けないぜ。オプティマスに盗られてたまるか! よ−し、今からでも遅くねえ、俺たちの胸いっぱいの愛をチョコ的なものに託してメガトロン様に渡すんだ! オイ、隅っこでスネてるスタースクリーム、お前も行くんだよ!」

「俺たちのバレンタインデーはこれからだぜ!」


20080312 初出 日記









フレンジー君 第四話








「勝ったな、オプティマスに」

「打ち合わせもしてないのにメガトロン様とオプティマスの良い感じの雰囲気をギャグで流したのは圧巻だった」

「デバステーターお前たち見直した。俺たちだってチームプレー出来る」

「ケッ、俺はメガトロンの邪魔をしたかっただけだぜ」

「ギャグではない。俺は本気でメガトロン様を愛しているからチョコを差し上げたのだ!」

「あ、うん。ブラックアウトはいいよそれで」

「オートボットの奴ら『友チョコ』とかあげてるらしいぜ。ケッ! 馴れ合いウゼェ」

「そんな馴れ合いは俺たちには不要だ」

「さすがバリケード、硬派だな」

「バリケード〜!」

「バッ、バンブルビー」

「これおいらからー。チョコレート的なもの!」

「ぉ、ぉぅ」

「……バリケード、お前後で倉庫の裏に来い」

「ねぇ、ラチェットが良いエネルゴンあるから一緒にどうぞって」

「やったー!! オートボットの皆さんって、ホンッといい人だから大好き。また来ていい?」

「いいけど、あんまりオプティマスを挑発しないほうがいいよ。月夜の晩ばかりじゃないんだし。良い機会だからメガトロン離れすれば」

「……と偉そうな事言ってるお前だって、嫌だ嫌だって大騒ぎしてただろう。どんな風の吹き回しだ?」

「言わなくて良い事は黙っててよ、ジャズ! だって、おいらオプティマスのあんな嬉しそうな顔はじめて見たんだ。あんな顔みちゃったら、おいらもう嫌だって言えないよ」

「大人だな……。未熟な俺たちはまだいろいろ受け入れることが出来ん」

「なに聞き分けいい子しやがってんだ、テメーこの蜂野郎! 甘ったれのいい子のにおいがぷんぷんするんだよ!」

「だっておいらいっぱい甘やかされて育った末っ子だからね」

「それは愛に渇いて荒んだ俺たちに対する挑戦かコラー! 俺たちは絶対に認めないからな。邪魔してやるんだからね!」

「やれるもんならやってみなよ。腕ずくで止める」

「あ? やんのかコラ? 勝負しろや。グレートウォー2じゃあ!」

「いいよ。その代わりおいらが勝ったら、メガトロンはフーバーダムにお婿に来てもらうからね」

「そんな事になったらメガトロン様がオートボットの小姑どもにねちねち苛められるではないか!! おいフレンジー、もうちょっと慎重に……」

「上等だコラー! いけバリケード」

「断る」

「なっ……! じゃ、じゃあ、じゃんけんか花いちもんめで勝負しろやぁ!!」

「俺はラチェットにばらされたくないから、先に飯食ってくるぜー」

「一時休戦だコラー」

「おいらも賛成だコラー」

「両方ともけっこう弱いな」



「今日は楽しかったなー、オプティマスとメガトロン様が本気かもしれないってのはショックだったが……。人間どものくだらねぇイベントもまあ捨てたモンじゃねえな。もう遅いし、寝ようぜー」

「そうだな。……おい、フレンジー、貴様俺のダッシュボードの中に何入れてる? 大人しく寝ろ」

「バリケード、いつもありがとな。チョコ的なものでも食ってくれや」

「馴れ合いウゼェじゃなかったのか?」

「馴れ合ってねーよ。ギブ&テイク。お前にはいつも世話になってるからな。日ごろの恩返しって奴だ」

「ふん。お前の論法で行くと、俺がお前にチョコレート的なものをやるのもおかしくないわけだな。俺からだ」

「なんだよー照れるじゃねーか。考える事は同じってか。ありがと、大好きだぜバリケード。これからもよろしくなー」

「ああ」

「十倍返し狙ってたのに当てが外れたぜ」

「……口の減らん奴だ」



20080704 初出 雑記










フレンジー君 第五話 最終回






「メガトロン様〜〜。おはよーございまーす。あなたのフレンジーが朝を告げに参りましたよー、お寝坊さ〜ん、朝ですよー」

「すまない、静かにしてくれないか」

「おおおおお、お前はオプティマス!! なんでお前がメガトロン様の寝室に!!」

「昨日遅くに来たのだ。挨拶もせずにすまない」

「え……? ってことは、メガトロン様の部屋に泊まったのか、二人っきりで?」

「メガトロンに何か用か? すまないが、今寝たばかりなので急用でなければ出直してくれないだろうか? なにか伝える事があれば伝えておこう」

「(スルーかよ)えーと、ヤボ用だったんで……。別にいいです」

「そうか。私も少し休ませてもらう。後でまた会おう」


「おい、まだかよ! 腹減った、早く朝飯食わせろ。メガトロン様年くってる癖になんで朝遅いんだよ!」

「うるさいぞスタースクリーム。『朝食は全員揃って』がディセプティコンの掟だ。フレンジー、メガトロン様は?」

「朝ごはんいらないって」

「ヒャッホー、食卓のニューリーダーはこの俺だ。メガトロンの分のおかずは俺様が頂くぜ!」

「っていうか、メガトロン様の部屋にオプティマスがいた」

「なにぃ!?」

「ボーンクラッシャー、ブラックアウトがちゃぶ台ひっくり返さないように抑えとけ!」

「オプティマス、メガトロン様とずーっといっしょだったんだってよ。んで今から寝るって……。俺怖い!! メガトロン様が『俺の嫁を紹介する』とか言いだしたらどうするよ。心の準備とかまだぜんぜんできてねーよ! 展開が早いんだよ」

「さすがトップ同士だと決断も行動も早いな。昨日の今日でそれは無いと信じたいが……」

「やはりオプティマスは恐ろしい奴だ。メガトロン様に近づけるべきではなかった。オートボットに油断したのが間違いだったのだ!!」

「きゅー!」

「結婚前の雄螺子と雌螺子が一晩中同じ部屋にだなんてはしたない! そういうことはきちんと結婚螺子を締めてからするべき羨ましいったらねえよなにあの恋人面! 俺だって今寝たばっかりって知ってたら遠慮したさ! ハァ? 寝るまで見守ってたってか? 寝顔独り占めってか? 俺だってメガトロン様の寝顔くらい見たことあるんだから! 俺にも見せろよちくしょう調子のんなよ。朝まで二人で一体何してたんだよ。なめたりかいだり触ったり繋げたり切断したりまた突っ込んだり目があったらキスとかそんなんだったら俺も混ぜてくださいお願いします。してなきゃしてないでなんか本気で好きなんです大事にしてるんです風で余計いやらしいし、もー絶対ゆ・る・せ・な・い〜〜!」

「たまに本音が混じってるぞ、フレンジー。いいから黙って飯を食え」




20080725 UP


最初は雑誌とか新聞の四コマ風にしたかったのですが途中から路線が変わりました。
サイトにある唯一のディセップ話がコレかよ。って気もしますがよしとす。










その後のフレンジー君








「なんか朝から疲れたからオプティマスの持ってきた土産でも食おうぜ」

「エネルゴン羊羹か。茶を淹れよう」

「羊羹は平等に切れよ。争いが起きるからな」

「ん? なんか手紙が入ってるぞ。えーと、『この度は快くオプティマスにメガトロンを譲っていただきありがとうございました。ささやかですがお礼です。オートボット一同』」

「全員食うなーーーー!!!」

「アホか!! メガトロン様と羊羹を交換するバカがどこにいるか!!」

「ずうずうしい!! 履き古したパンツと宇宙交換して。って言うくらいずうずうしい」

「デバステーター羊羹かじった……」

「もどせ!」

「んきゅ〜、んきゅ〜」

「ブラックアウト、スコルポノックを説得しろ!」

「あとで新しいの買ってあげるからペッしなさい! ペッしなさいスコルポノック!!」

「きゅ〜〜」

「汚いが一応原状回復できたぞ。オプティマスに突っ返してやろう」

「私を呼んだか? 先ほどはすまなかった。メガトロンはもう少し寝かせてやって欲しい」

「お、オプ……! ぐわっまぶしっ!」

「なに綺麗になってメガトロン様の寝室から出て来てるんだオプティマス!」

「一晩中メガトロン様と何してたからそんなオーラ出してるんだ……」

「話すと長くなる上に自慢話になるのだがいいだろうか?」

「いいわけあるかうるせぇそれ以上言うな、エビフライぶつけんぞ」

「海老フライ?」

「地球のネットスラングで、『酷い目にあわせるぞ死ね』というような意味だ」

「……ひょっとして、私はここで歓迎されていないのだろうか?」

「エッなにその今気付いた。みたいな言い方。歓迎される訳ないだろ」

「私はお前たちと友好的な関係を築きたいと思っている。メガトロンはフーバーダムに来て貰うが、盆と正月くらいは帰省を許してやっても良い」

「なんだその上から目線!! 仲良くする気ぜんぜんねえ!! オプティマスダメ絶対! 司令官の仮面のその下は獣盛りのオートボット毒婦。俺たちは全力でメガトロン様のフーバーダム行きを阻止します!」

「海老フライ、を、ぶつけるぞ」

「全力で逃げろフレンジぃぃぃぃ」

「ギャ〜〜」

「フレンジーが捕まった!」




「なんかメガトロン様が寝てるうちに、俺たちもメガトロン様についてフーバーダムに行くって事で話まとまっちまったけど、上手く丸め込まれたって気もしないでもないな〜〜」

「しかし、メガトロン様お一人でフーバーダムに行かせるのは危険だ。お守りするためにはやむをえまい」

「……お前たち、セイバートロン星のサウンドウェーブから通信だ。モニターの前に集まれ」

「どうしたバリケード、なんか足元フラついてんぞ」

「先ほどサウンドウェーブに死ぬほど怒られてな」

「なんで?」

「例えばだが、オプティマスがメガトロン様にこう言われたとしよう。『おまえと一緒になりたいのは山々だが、俺の部下が納得するまい。堪えてくれ』お前がオプティマスならどうする?」

「ディセプティコンズを滅ぼす」

「……普通は、俺たちを懐柔しようとするな。『お前の部下達がフーバーダムに来たいと言っている』とでも言えば、その気がなかったとしてもメガトロン様も動く」

「俺たちは上手いことダシに使われたって事か!? ヤベッもらった羊羹食っちまったよ!」

「先ほどの話はあくまでも推測だが、サウンドウェーブは俺たちがオートボットの計略を見抜けずメガトロン様を売ったとすごい剣幕でな。お前たちにメガトロン様はお任せできんと言っている」

「サウンドウェーブが地球に来るフラグが立ったー!」


20080802 UP


星野夢実みたいになってるオプティマス









地球に馴染みすぎのフレンジー君







よお、サム。なに見てるんだ?」

「ニュースだよ。ミステリーサークルが現れたんだって」

「馬鹿馬鹿しい。子供だましの悪戯だろ、そんなの」

「それがさ、こればっかりはそうじゃないみたいなんだ。明らかに地球の技術で作るのは不可能だって専門家が言ってる。絶対コレは本物だよ。宇宙人の仕業だ!」

「バカじゃねえの? 誰かの暇つぶしに決まってるだろ。そんなの信じてるのか?」

「なんで本物じゃないって言い切れるんだよ!」

「そりゃ、オレが作ったからだ。イタズラの暇つぶしにな! ギャーハハハ! お前マジあんなのが本物の宇宙人の仕業だと信じてるの? おーいバリケード、まんまと引っかかったバカがここにいるぞ〜!」


20090427 UP

TVでミステリーサークル作ってたおじいさんの事をやってたので思いついたネタ。
クリスタルスカルはラチェットが作った。


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