Thousand Wave











「サウンドウェーブ」

 空気を震わす音色。

 メガトロン様の声。

 低く、力強い。命令する事に馴れきった傲慢な響き。

 心地よい、心地よい、心地よい。

 もっと俺の名前を読んでくれ。


「スタースクリーム」

 俺の名を呼ぶ声にはない、同じ声に含まれる甘い響き。

 言葉の意味するものを無視し、ただ音楽としてその響きを味わう。

 しびれるように甘いその響きを盗む。自分を求めさせ、甘やかす。強者のみに許される愉悦。


「メガトロン様」と返すのは、回路に絡み付くような媚びた声。

 無意識の甘え、精神の幼稚さが産む残酷さと、痛々しいほど一途に向けた感情。

 ベッドの上でもないのによくそんな声を出す。

 転がしてその毒気を味わう。


「サウンドウェーブ!」

 カセットロンたちの俺を呼ぶ声。

 暖かな波が広がる。

 信頼と愛情。大切に思い、思われているという幸福。

 返事を返す自分の声に、愛しさ、いたわり。



「メガトロン!」

 お前は気付いているのか?

 自らの闇を解放してくれる男が来るのを待ちわびているのを。

 メガトロン様を前にして、自らの本能が狂おしく歓ぶのを。

 サイバトロンの馬鹿どもは誰も気がつかないのか?

 お偉い総司令官が、メガトロン様のオイルをすすりたがっている飢えた淫乱だと

 お前がメガトロン様を呼ぶ声からは、もっと犯して欲しいという本音が聞こえる。


「コンボイ!」

 怒りを露にした叫び声に嘘はない。

 必要以上に高ぶった声の響き。

 アルファートリンの思惑通り、自分のために作られた玩具に絡めとられる。

 なぜメガトロン様ほどの人がと思う

 自らの声の中に嫉妬と諦めが滲むのを他人事のようにどこか遠くで感じる。



 音は広がる波だ。凪いだ海のような俺の心に漣を起こし、ぶつかり合って広がってゆく。

 連鎖し、広がり、ぶつかって跳ね返り、消えてはまた生まれる。


 メガトロンという響きの音と出会ったその日から、千の波が俺の心を満たす。




ENDE.

サウンドウェーブの人物評価。
サウンドウェーブの内心ってどんなんだ? と思って書いたんですが難しすぎた。


20080501 UP

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